このブログで何度か書きましたが、音通堂という会社は日本の伝統楽器(太鼓や三味線、箏や尺八などの和楽器)の演奏者を手配、出張演奏する会社です。もちろんこの事業は現在も行っており、このライブ配信事業は2021年から新たに始めたものです。一見すると伝統楽器奏者を派遣する仕事とライブ配信をすることはあまり共通点がないと思えるかもしれません。
私達が音通堂を立ち上げたとき、全く同じ事業を行っていた他の会社はなかったとはいえ、例えば洋楽器奏者を派遣する事業を行っていた会社は沢山ありましたし、イベントやパーティーを企画運営する会社も沢山ありました。
そこに新規参入という形で新たに始めたのは今から10年前の2011年。
様々なシチュエーションに様々な演奏者をブッキング、マネジメントしていくうちに、そこには沢山の気付きがありました。
私達に連絡をくれるクライアントは楽器演奏者を派遣してほしいと思ってメールしてくれるのですが、それで全てが解決するわけではなく、クライアントの中で解決させなくてはいけない様々な問題は他に進行中であること。
例えばイベントの進行をどうするか、ステージのサイズや料理、来賓の扱い、お土産やお弁当の手配などなど、ひとつのイベントをこなすのは想像以上に大変です。
私達は現場を重ねていくうちにクライアントからそういった苦労を耳にするにつけ、「音通堂に連絡をくれればワンストップで色々なことを解決できないだろうか」と思いました。
かねてより音楽業界で長く活動してきた私達ですから、イベント事について解決できそうなステージ周りの諸問題、例えば音響や照明の知識、ステージ進行の経験、どうすればより伝統楽器がイベント内で輝くかという演出などはあるていど勉強すれば依頼されるに足る技術を発揮できるかもしれない。
そうして業界の先輩や専門家の方たちのアドバイスを受けて音響や照明の機材を購入、実際自分たちで持ち込んでステージ周りに必要な専門的な課題を解決し、クライアントにムダな労力をかけずパフォーマンスを最大化してきました。
そして去年(2020年)、コロナでイベントが破滅し、私達の技術や経験は行き場を失いました。しかしこれまで私達と一緒に歩んできた演奏者の面々はここにいますし、彼らに活動の場を与える使命感もあります。そこで「高レベルの配信を自分たちで出来ないだろうか」と考えたのが始まりで、そこから1年かけて何回も実証実験を繰り返しました。
手段は変われど、今その場でライブで行われていることを技術的に支えるという視点では演奏者派遣もライブ配信サポートも同じだと思っています。数々の技術的課題は、それを行う側の理念や思考によって解決され、その結果イベント会場にいる人もPCやテレビの前にいる人も当たり前のように進行を眺め、
笑ったり泣いたりができるのだと思います。